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「インチキに夢中でカードの意味も覚えてないのか。塔のカードは唯一、正も逆も救えない最悪のカードだ。不慮の事故、終焉……」
次の瞬間、世界がぐるりと回って、気が付くと私はなぜか踏切の真ん中に立っていた。
「え……? な、なんでいつの間に!?」
大きな警告音が耳を貫き、白い光が目を焼いた刹那。
ドン、グシャ
私は自分の最期の音を……確かに聞いたのだった──。
──急停車した電車の前方に立つゼロの元に、ヒュウッと引寄せられるように小さな玉が飛んできた。
それを片手で掠め取り、彼は軽々と線路の柵を飛び越える。
「ほらよ、例のバカ女の魂。狩ったぞ」
ゼロは柵の向こうで佇んでいた少女の掌に、コロンと群青色の玉を乗せた。
「また何か遊戯(ゲーム)をしたの?」
少女の手に、浮かび上がるように現れた小さなカンテラ。その中に受け取った玉を入れると、ボウッ……と肉体を失った暗い魂の灯りがともる。
「タロットで遊んでやった。最後に塔のカードを引いて、ミンチ」
クックと忍び笑いを漏らし、ゼロは肉を巻き込んだ電車を振り返る。
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