いつものこと

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 入社した時から、真人は涼の華奢な身体つきと凛々しい中に幼さを持て余した顔が印象付けられ、目で追っていた。涼は真人よりも五つくらい歳が上だったか、同期入社の社員かと見間違うほど若々しかった。  研修勉強会で指導員としてやってきた涼に一目で惚れぬいていたんだと、今更ながら確信している。サラッと髪を揺らして一生懸命に説明や指導に取り組んでいる姿が微笑ましいとさえ思ってしまうほど、愛らしいと感じた。  恐らく若く見られているだろうと自覚している涼の澄ました顔を歪ませて泣かせてみたいとも思った。いろんな意味で鳴かせて、深く啼かせてみたいと。  真人は年上に惚れるのはこれが初めてだったが、今までに感じたことのない想いを馳せていた。  一方、涼の方はいつも年寄りも若く見られ、対外的にもナメられてしまう自分にコンプレックスを持っていた。  研修の担当に選ばれた時も、上司に向かってあからさまに怪訝そうな面持ちで話を訊いていた。  いつになったら、年相応になれるのだろうか、年下から若いだとか可愛いとか云われなくなるのはいつだろうか。そればかりが気になって仕方なかった。  仕事に関しては絶対に厳しく、徹底して取り組む姿勢は評価されていたが、容姿が容姿だけに初対面の者からの信頼を得るまでには骨を折ることが多かった。  当然、真人に対しても初めは冷たくあしらい、無表情かつ不機嫌な顔を見せていた。どうやらそれがいけなかったようで、そういう態度を覆したいと思わせてしまったようだった。
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