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小さかった喘ぎも、吐息もだんだんと大きくなり、真人と涼の声が輪唱する。早まる呼吸も苦しそうな掠れた声に変わり、涼は目尻に雫を伝わせていた。真人はそれを唇で吸い上げ、少しだけしょっぱい水分補給で喉を潤す。
「真人、待って……。ああ……」
「待たない、……んっ」
早まる腰の動きに、卑猥な音が重なり、痛みから解放されて善がる涼の頬が赤くなる。少しだけ首を絞める様に押さえ、苦しみに歪む顔を嗜む。優しく汗ばんだ額に着いた髪を撫で上げた。
「先輩……可愛い。俺の好きな顔、もっと苛めたくなる」
「んぐっ……」
喉元に押された親指の力に細くなった気道を支配されている事に快楽を見出す。
このまま死んでもいいと思うくらいに。身体の中の感じるところに当てられる真人自身の力強さと熱を一気に締め上げた。
抵抗できるのはそれくらいのことだろう。それも、無意識の行為に過ぎないが、受けるだけでは年上としてのプライドがやはり許せない。
「せ、先輩……んっ」
「あっ、はぅ……」
ドクッと熱いぬめりが涼に飲み込まれ、身体を反り返らせた涼の胸に真人が息を吐き捨てる様に沈む。双方の身体の重なる腹にも白く濁った液がねちゃりと塗り合わさる。
弾ませた呼吸を整えながら、少し痺れた手で真人の頭を撫でる。
終わった後、真人は甘える様に涼に縋りつく。可愛い後輩と思える瞬間がこの時だと涼はいつも思っていた。
「……真人、よかった?」
「うん……」
攻め抜きながら、攻められる楽しみが週末の過ごし方。社内では常に厳しい涼もプライベートになれば真人と同等であり、譲歩していた。
迎える休日の朝は、眠る真人が大きな身体を丸めて涼の胸にに縋っている。そんなときがいつまで続くかわからないが、出来るだけ一緒に居たいと思っている。
真人の昼と夜の顔が従順なしもべであり、極悪な輩であることを知っているのは自分だけだと思えるだけで、涼は少しだけ支配欲を吐き出せる。それを、成し遂げてくれるのは後にも先にも真人だけなんだ、と可愛い寝顔を愛おしく見つめていた。
「真人、好きだよ……」
起こさないように、額に唇を落とした。また、来週も一緒に朝を迎えるための約束の徴に……。
〈 完 〉
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