プレハブの染み

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プレハブの染み

 大学のボランティアで、老人福祉施設のペンキ塗りをすることになった。  といっても、建物総てにペンキを塗るような大掛かりなことではない。屋外清掃の品などが入った、小さなプレハブ小屋を塗るだけのことだ。  指定の道具とペンキを受け取り、調子よくプレハブを塗装していく。だが、塗り進めて行くうちに奇妙なことが起こった。  渡されたペンキは黄色が強めのクリーム色なのだが、何故か一か所、塗っているうちにそれが焦げ茶に変色する場所があるのだ。  ぱっと見には判らないが、プレハブの壁面に錆でもついていて、それがペンキ越しに滲み出てくるのだろうか。  もしそうなら、渡されたペンキをいくら綺麗に塗ったとしても、すぐに焦げ茶の染みが浮き上がってしまうだろう。  一応最後まで塗ってみたが、その間にも焦げ茶の染みは浮かんできている。これは施設の人に報告しておくべきだろう。  そう思い、職員さんにこのことを告げに行った。  入り口付近にいた職員さんは、俺の話を聞いても半信半疑の様子だった。だから一緒に来てもらい、焦げ茶の染みを見てもらった。むろんそれだけでは信じてもらえそうになかったから、新たに染みを隠すようにペンキを塗り、その状態でも、すぐに染みが浮いてくる様子も見てもらった。  そこまですると、ようやく職員さんは俺の言い分に納得し、もっと上の、責任者の人を呼んで来ると去って行った。  それを待っている間、手持無沙汰で立っている俺の側を、施設に入居者している人達が過ぎて行く。  その一人がふいに悲鳴を上げた。
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