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「お疲れ様です!」
大森聡子の可愛い声がしたと思って、急いで寝室から玄関へと向かうと大森聡子も早く愛の巣へ来たかった気持ちが溢れているような軽く上気した感じで引っ越し業者のお兄さんたちに挨拶している。
まぁ、今は自分よりも引っ越し業者の方が働いているのだから、大森聡子の中の優先順位が
引っ越し業者>愛しの王子様
になっていても許してしんぜよう。
「あぁ、王子班長、ベッドはどこに運べばいいですか? 物置部屋ですか? それとも、和室?」
大森聡子が自分の方へとやってくる。
聞き捨てならない言葉を吐いた気がする。
「はっ? ベッド? いらないでしょ?」
「えっ? だって、どっちみち、狭いから」
……そうだった、大森聡子にはこの日のためにキングサイズベッドを用意したことは内緒だった。
サプライズで驚かして王子健太の株をあげられないところまであげてしまおう大作戦なんだった。
「狭くてちょうどいいから。あっ、今、話していたんですけどベッド、処分してください。処分料金、払います」
「ちょっ、私のベッドですよ!」
大森聡子が睨みあげてくるけれども、ここで引いたら男が廃るしイケメン王子でもない気がする。
ここは男らしく、グイグイと引っ張るのだ。
そういう男が好きな女性が多いことは調べてある。
大森聡子が喚いているけれども、ひとまず大森聡子を無視して処分の話を済ませる。
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