『永遠だけが知っている』

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 野次馬に紛れると、フードを被り顔を隠す。 「綾瀬、どこかで見ているよな?」  俺の死んだ親友は成仏もせずに、現世に留まっている。敵対している親友であるが、思い出を共有しているのは確かだ。 「ああ、見てた」  やはり、綾瀬が黒い服を着て野次馬の中に現れた。  違和感なく存在しているが、綾瀬は実体を持たない。  各種の幽霊画に足が無いのが分かる。綾瀬は、そこに姿が見えているのに、影はない。足跡も残さない。存在しないものは、見えていても、痕跡を残してくれないのだ。 「この火事。この紙のせいなのか?」 「まあ、その紙、異物(インプラント)だからな。しかも、呪いつき」  異物(インプラント)は、どうにか信じるようになったが、呪いはまだ信じていない。  綾瀬は、こちらを向かずに話し、まるでスパイ映画の、情報のやりとりのようになってしまった。  この夜中に、よくここまで野次馬が出てくるものだ。しかも、皆、動画を撮っている。  俺は、動画に撮られたくないので人を避けて、誰も居ない道に歩いて隠れた。すると、綾瀬も後ろをついてきた。 「預かろうか、その紙。俺、遊部を燃やされたくない」  綾瀬の手が、俺の肩を掴んだ。 「内容を知りたい……今の俺ならば、読めるだろう」  綾瀬の手を振り切ると、綾瀬は正面に回り込んだ。 「遊部。俺は死んでいるから、もう死ななない。それに、俺は、遊部を愛している。だから、紙を渡して。火災にならない場所を探して俺を呼べばいい。紙を持ってゆくよ」  火災にならない場所とは、消防署の前とかであろうか。それでは、火災になっても、すぐ消せる場所であるか。 「紙を渡して、遊部……」  綾瀬に、見透かされている。俺は、丼池家を危険に巻き込みたくない。 「遊部……」  俺が諦めてため息をつくと、綾瀬の笑顔が目の前にあった。見慣れた笑顔で、綾瀬が死んでいるという事実が揺らぎそうになる。でも、もう俺は、綾瀬が死んだと認めたのだ。 「……綾瀬、約束だぞ。俺が呼んだら、持って来て」 「よし、約束ね」  綾瀬が、紙包みを持つと消えて行った。  俺はフードを被ったまま、又、野次馬に紛れると、丼池を捜した。 「遊部さん!」  丼池の方が、俺を探してくれ、百舌鳥とも合流した。 「遊部さん……これは、何ですか?」
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