『永遠だけが知っている』

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「ずるいですよ、遊部さん。母さんを出さないでください」  丼池家に帰ると、美奈代が俺の姿を見て、ため息をついた。 「元に戻ったのね。ほっとしたような、残念なような。でも、おかえりなさい、遊部君」  美奈代が抱き込むと、肩を叩いてくれた。 「ただいま戻りました」  母親というのは、強い。幼くなった、俺の姿を見ても、平然と受け止める。元に戻っても、こうやって受け止めてくれる。  風呂に入って、眠ろうかという時に、サイレンが鳴っていた。また、火災であろうか。俺が、窓から外を見つめていると、丼池が部屋に入ってきて、後ろから俺を抱きしめていた。  男女だったら良かった。こんなに優しい丼池に、俺は返せるものがない。 「どこにも行かないでください。それに、綾瀬さんにも会わせたくない」  田舎に行って、小暮の通夜で、綾瀬の噂は事欠かなかったという。綾瀬も、もう亡くなってから、七回忌になるだろう。なのに、皆、綾瀬が死んでしまったことが、信じられないでいた。 「綾瀬と俺は、幼馴染で親友だった」  綾瀬との記憶は、思い出さないようにしていた。 「地区で同じ年は、五人、二人が女の子だった」 「え、あと一人幼馴染がいるのですか?」  もう一人とは、あまり仲が良くなかったので、付き合いがないのだ。 「いや、家は近かったけど、知り合い程度かな」  俺は、母親の浮気の子供で定着してしまっていて、子供を遊ばせない家もあったのだ。  俺も、綾瀬の特に祖父が俺を毛嫌いしていることもあって、中学では他人のフリをして隠して会っていた。従兄弟のアパートから高校へ行く事が多くなってからは、綾瀬との接点は本当に減ったかと思う。  綾瀬も、俺にアパートの住所など、聞きたそうであったが、無理には聞き出さなかった。 「夕方だったかな。綾瀬が俺の家に来ていた。どうした?と聞くと、祭りだからと言った」  俺は、地区の祭りには参加しないようになっていた。弟の実徳が生まれてからは、俺は、遊部家の住人ではなかった。仮住まいのような気がしていて、早く出てゆく事ばかり考えていた。  両親は、実徳を祭りに参加させ、遊部家の跡取りとして扱っていた。そんな場に、俺が行くべきでもない。 「俺は祭りには行けないと言うと、綾瀬も自分も不参加にしたと言って、弁当を持ってきた。赤飯だった」
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