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ヴィンリーは依然として、前を向いたままではあるが、目はもう懐中電灯の光を追っていなかった。
そもそも彼の手にある懐中電灯自体が、向かいの壁をぼんやりと照らしたままで、動いていないのだ。
そして、彼の視線はそのぼんやりと浮かんだ壁まで届かず中途の闇の中で途切れている。
「ヴィンリー」再びイヴァンが話し掛ける「そのイリアの死体を、ここに運んだのは君なんだね」
「お前は誰だ?」ヴィンリーは前を向いたまま、闇に語り掛ける様に言った「さっきから俺の頭の中で話し掛けてる…お前は誰なんだ?」
ヴィンリーの様子がおかしい、もう既に狂っているのでは…イヴァンの数歩後ろで見ていたグリゴールはそう思った。
しかし、イヴァンの責めは執拗に続く。
「私が誰であるか、それは問題じゃないんだよ、ヴィンリー」イヴァンは言う「今、我々にとっての問題は、誰がイリアを殺したのかと言う事だ」
「我々?」ヴィンリーは呟く様に言った「我々とは一体誰の事なんだ?」
「君と私だよ」イヴァンは即座に応える「ヴィンリー、忘れたのか?」
そう言うとイヴァンは手にある懐中電灯の光を、ヴィンリーの横顔にあてた。
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