(1)亡霊に出会う夜

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やがて階段に差し掛かると、ヴィンリーの緊張の糸は一気に張り詰めた。 それが死者への畏怖によるものなのか、それともその死者の兄二人への現実的な恐怖によるものなのか、彼自身も分からなかった。 階段を一段上がる度に、イリアの死体が背中で揺れ動く… そんなリアルな感触。 いくら考えまいとしても、体が勝手に思い出してしまう。 そして記憶が鮮明に甦れば甦る程、ヴィンリーの意識は遠退いてゆく。 イリアの顔が見える…14才?まだ子供じゃないか、そんな子供に銃など持たせてどうしたい? 再び目眩… ヴィンリーの意識が僅かに遠退く   そうだ、あの時、 グリゴールがカウンターの中に入って来た時に俺のグラスに薬物を混ぜたに違いない 「ヴィンリー」声が聞こえる グリゴール、お前一体俺に何を飲ませたんだ?! 「ヴィンリー、大丈夫か?」 後ろから聞こえるのは…誰の声? ウール!? ウール エルデン! 違う、違うんだ…そっちじゃない! それは罠だ! 手を伸ばす、もう少し… 手を伸ばす、そこに肩が…金髪を短く刈り込んだ側頭部がゆっくり振り返る…ウールじゃない ああイリア…泣いているのか… 額から伝って落ちる… 血だ…ああイリア… 「ヴィンリー!!」すぐ耳元で声が聞こえた。 我に返ると真っ暗で物音ひとつしない廃屋の中、グリゴールに支えられて立っていた。 再びグリゴールと視線が交錯する。 しかし今度のヴィンリーの視線は不安げに震えていた。    
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