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やがて階段に差し掛かると、ヴィンリーの緊張の糸は一気に張り詰めた。
それが死者への畏怖によるものなのか、それともその死者の兄二人への現実的な恐怖によるものなのか、彼自身も分からなかった。
階段を一段上がる度に、イリアの死体が背中で揺れ動く…
そんなリアルな感触。
いくら考えまいとしても、体が勝手に思い出してしまう。
そして記憶が鮮明に甦れば甦る程、ヴィンリーの意識は遠退いてゆく。
イリアの顔が見える…14才?まだ子供じゃないか、そんな子供に銃など持たせてどうしたい?
再び目眩…
ヴィンリーの意識が僅かに遠退く
そうだ、あの時、
グリゴールがカウンターの中に入って来た時に俺のグラスに薬物を混ぜたに違いない
「ヴィンリー」声が聞こえる
グリゴール、お前一体俺に何を飲ませたんだ?!
「ヴィンリー、大丈夫か?」
後ろから聞こえるのは…誰の声?
ウール!?
ウール エルデン!
違う、違うんだ…そっちじゃない!
それは罠だ!
手を伸ばす、もう少し…
手を伸ばす、そこに肩が…金髪を短く刈り込んだ側頭部がゆっくり振り返る…ウールじゃない
ああイリア…泣いているのか…
額から伝って落ちる…
血だ…ああイリア…
「ヴィンリー!!」すぐ耳元で声が聞こえた。
我に返ると真っ暗で物音ひとつしない廃屋の中、グリゴールに支えられて立っていた。
再びグリゴールと視線が交錯する。
しかし今度のヴィンリーの視線は不安げに震えていた。
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