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次の瞬間、強烈な光に視界を奪われる。
「しっかりしろ、ヴィンリー」誰かの声がする。
すぐに光は消え、暗闇と静寂が戻る。
「ヴィンリー」また先ほどの声…そして光
「落ち着け」同じ声
恐る恐る、その方に目を遣ると、懐中電灯の光に照らされたイヴァンの顔が見えた。
「いいかい、ヴィンリー」イヴァンは言い聞かせる様に優しい口調で言う「大丈夫だから、大きく息を吐いて…」
ヴィンリーは言われた様に大きく呼吸をしようとするのだが、逆に胸が苦しくなる。
激しい動悸。
思わず、その場にしゃがみ込んでしまう。
「ヴィンリー、息を吸うんじゃない、ゆっくり吐くんだ」イヴァンがすぐ横にしゃがんで言う。
徐々に胸の奥に何かがつかえている様な息苦しさが和らいで行く。
「さあ、もう大丈夫だ」イヴァンは立ち上がりながら言う「先を急ごう」
意識の朦朧としているヴィンリーにとって、この場面でどうする事が最善策かなどと考えられるはずもなかった。
彼は夢遊病者の様に目の前のドアノブを掴むと、ためらわず引いた。
そしてイリアの死体が転がっている部屋の中へと入って行った。
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