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ヴィンリーは、イリアの遺体が横たわっていると思う辺りから、奥に向かって懐中電灯の光を何度か走らせてみた。
最初はゆっくりと、そして徐々に早く…
居ない…
いや、無い…
しかし、視界がほぼ皆無の闇の中、動揺している精神状態での事、記憶が全くの見当違いである可能性も否めない。
そこで場所を変えて、同様に懐中電灯の光を走らせる。
やはり何もない。
次第にヴィンリーの息遣いが荒くなって行く。
イヴァンとグリゴールは先程から背後に立ち、無言でその様子を見ている。
ヴィンリーは小声で独り言を呟きながら、がらんとして徒広い部屋を、縦横に懐中電灯の光を走らせている。
そして次第に声は大きくなって行く。
「何故だ!?何処だ!?」
ヴィンリーの気がふれるのも時間の問題だった。
「ヴィンリー」満を持してイヴァンが声をかける「何を探してる?」
イヴァンの声を聞きヴィンリーは、独り言は止めたものの、その大きく見開いた目は尚も自ら動かしている懐中電灯の光を見ていた。
「そこに隠しておいた筈のイリアの死体がないんだな」イヴァンの言葉は、一太刀でヴィンリーの心臓を斬り裂いた。
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