他人であるアナタ、さようなら。

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熱気を孕んでいる風が肌を優しくなでる頃、私は夕焼け色に染まった町を一人歩いていた。今日はあまり人気がなく、人の明るい声がほとんど聞こえてこない。いつもは散歩をしていれば多くの人とすれ違い、挨拶を交わすのに、今日は対照的に静かなのが寂しかった。まあ、今はお盆休みの真最中。皆帰郷したり、どこか遠くへ行ったりしているのかもしれない。  オレンジ色に艶めかしく輝いている太陽が、容赦なく私に熱を浴びせてくる。日焼け止めを塗っている割に焼けて黒くなっている肌が、毎日外出していることを証明しているようだ。  ゆったりとした足取りで歩いていると、不意に木々の擦れ合う音が聞こえてきた。無意識のうちに、その音に耳を傾ける。とても爽やかな音だったので思わずあたりを見渡すと、緑の多い公園が視界に映し出された。  
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