他人であるアナタ、さようなら。

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 なぜかその公園がとても気になり、そっとそこの入り口付近に近づいてみる。 すると、砂場で遊んでいる小さな男の子の姿が目に留まった。  その男の子は小さな砂場にちょこんと座って、何かを作っている。……何を作っているのだろう。残念なことに、ここから出は彼が手を動かしていることしかわからない。私は少年の姿を見るためだけに公園にはいることを僅かに躊躇ったが、数秒考えた後敷地内へと足を踏み入れた。  こっそりと少年の近くに歩み寄る。砂場には、砂でできたなだらかな山ができていた。少年はそれに更に砂を付け、形を整えながらも大きくしている。可愛らしい容姿とは対照的な真摯な姿に、私は目を細めた。  じんわりと胸の中に温かみが広がる。しかし、それと同時に鋭利な胸の痛みも感じた。  ――賢人。  母と父が離婚する前に一緒に住んでいた、実の弟だ。一緒にいた時間はとてつもなく短かったが、その間に築いた関係は凄く良いものだったと思う。そのころ、まだ弟に自我は芽生えていなかったけれど、お互いに欠かせない存在だったはずだ。
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