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- part:Vartok -
目を開けると、見覚えのない真っ白な天井が見えた。
ここはどこだろう、と男が横になっていた体を起こそうとすると、ガンガンと頭に痛みが走った。
「・・・ってえ」
「あ、目が覚めたんですね!」
高いアルトの声がした方を頭をおさえながらのっそり振り向くと、軍服を着た爽やかな青年が丸椅子に座ってこちらを見ていた。男はしばらくぼーっと彼を見ていたが急にガバッと起き上がり、きょろきょろと何かを探すように辺りを見回し始めた。
何事かと心配そうに青年が声を掛ける。
「あの・・・どうかしました?」
その声も無視して男は出口のドアに向かって歩き出した――が、三歩目に地面がなく盛大にすっ転んだ。
「・・・ってえ」
どうやらベッドに寝かされていたらしい。
昨日も同じ様に転んだ記憶がある気がするが、よく覚えていない。
「だ、大丈夫ですか!?」
慌てふためいて青年が男に駆け寄るが、男は大丈夫だ、と言って自力で体を起こし、頭と体の痛みにはーっとため息をついてベッドを支えによろよろと立ちあがった。
「ここは・・・?」
「軍本部の医務室です。昨日の夜中に、酔いつぶれていた貴方を運んできたんですよ」
あのままじゃ危ないですからね、と青年はにこやかに説明する。
男は昨夜のことを思い出そうとするが、ふわふわした光くらいしか思い出せなかった。
記憶がほとんど飛んでいて、目の前の爽やか好青年を思い出すどころの話ではない。
「あー・・・悪かったな。俺はもう大丈夫だから」
「あぁーっ!待って下さい!!上の者が聞きたいことがあるそうなんで!!」
出口に向かって歩き出そうとすると、青年が慌てた様子で立ち上がり、男の腕を掴んで阻止した。
男はとても嫌そうな顔で青年を振り返った。
「・・・聞きたいこと?」
「あ、はい・・・もう少しでこちらに来ると思うので、それまで待って貰えませんか?」
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