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少々怯えながらもお願いをする青年の顔をじっと見て、男は少しだけ考える素振りを見せたかと思うと、ふう、とため息をついてベッドに腰掛けた。
その様子を見て良かった、と心底ほっとしたように呟き、青年も丸椅子に座る。
男はポケットから煙草とライターを取り出し、煙草に火をつけた。
――面倒なことに巻き込まれたな。飲みすぎるとろくなことがない。
そう心の中でぼやいていると、青年が間を持たせようと話しかけてきた。
「あの僕、ニニ・マルティと言いますが、・・・貴方は?」
「・・・ヴァルトーク」
面倒臭そうに短く男が名乗る。
青年――ニニは、にへらっと人懐っこく笑って続けた。
「ヴァルトークさんはお酒が好きなんですか?でも飲みすぎはほどほどにして下さいよ?アルコール中毒って怖いですから」
「ああ・・・」
「まあ、僕が言えることじゃないんですけどね!僕、お酒にすっごく弱いんで、いつもダウンして大尉に迷惑かけてます」
てへへ、とニニが苦笑する。
一人で良く喋る奴だな、とヴァルトークは変に感心した。
「で、昨日どちらで飲んでいたんですか?」
「酒場に決まってんだろ」
またそっけなく答えるヴァルトークに灰皿を渡しながら、ニニはへー、と感嘆の声を出す。
「あそこの路地にあったんですねー!僕、全然知らなかったなぁ」
「だから何だよ?」
「あ、そうです・・・よね・・・あははは・・・あー、・・・ヴァルトークさんっておいくつなんですか?」
「25」
「普段は何されてるんです?」
「お前の知らないこと」
「えーなんですかそれー」
なんだかんだ根掘り葉掘り聞いてくるニニに嫌気が差したのか、ヴァルトークはほとんど吸っていない煙草の火を灰皿にグシャッと押しつけて立ち上がった。
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