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「で?ピアノ大好きな甥っ子君。あっちの方はどうなんだ?練習してるか?」
「・・・」
沈黙で返すクロード。男ははあ、と今度はため息をつき、そして吸い込まれそうな紫紺の瞳で幼い少年を真っ直ぐに見つめた。
「男たるもの自分の身は自分で護るもんだ。俺はお前が危ない目にあっても、護る気なんてさらさらねえからな。勘違いするなよ」
「・・・だったら最初から助けんなよ」
「おー、心にも無い事を」
「なんでだよ・・・っ!」
クロードは男をキッと睨み付けた。そして思い切り立ち上がったかと思うとその勢いのまま男に殴りかかる。が、あっけなく避けられてしまった。
男は楽しそうに笑みをこぼしながら飄々としてからかうように言った。
「あぶねぇなー暴力反対だぞー」
「だったら・・っ・・!何で助けたんだよ・・・!?」
クロードは悔しそうにグッと両手を握り締め、叫ぶように怒鳴った。
男はすっと笑みを消し、無言で返す。
「あの時、父さんと母さんと一緒に死ぬはずだったんだ・・・っ!俺が荷物になるなら何で助けたんだよっ!?」
「・・・甘ったれんな」
先程とは打って変わった冷たい声で呟き、男はクロードを睨み返す。
氷の様な冷たい眼光を真に受け一瞬にして動けなくなったクロードは、あまりの緊張感に背筋に冷や汗が流れるのを感じた。
「そんなに死にたいなら、今此処で殺してやってもいいんだぞ?」
男は懐から一丁の拳銃を取り出すと、銃口をゆっくりとクロードの頭に向けた。
「死にてえなら、俺が殺してやる」
「や・・・やめ・・・」
「だったら何で自分の身を護らねぇ?誰かの助けを待ってたら、お前は死ぬぞ?」
やっとの事で声を絞り出したクロードだが、男の殺気に否応なく黙らせられる。
張り詰めた空気が二人を支配していたが耐えきれず助けを求めるようにクロードは叫んだ。
「お・・・俺には、無理だ・・っ!無理だよ・・・!撃てるわけないだろ!?」
「そうか、じゃあ――」
カチッ――黒く光る拳銃が音を立てた。
男は恐ろしく鋭い眼差しで、表情もなくただクロードを一点に見つめて言い放った。
「死ね――」
―――殺される・・・!
ひっと息を飲み、クロードは両目をギュッとつぶった。
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