前奏 - preludio -

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――クワックワッ。 「あ、れ・・・?」  本来ならば銃声がするはずだが、間抜けなアヒルの声が響いている。 クロードがそおっと目を開けると、銃口から一羽のアヒル人形が飛び出していた。 ――沈黙。 クワックワッ――と、アヒルがもう一度鳴いた。 「ぶあっはっはっは!!!」  そして盛大に響き渡る男の笑い声。先ほどまでの鋭さが嘘のような馬鹿笑いにクロードは放心した様子でへたんと膝をつくと、涙目になりながら男を睨んだ。 「フィーノの馬鹿!!吃驚しただろ!?」 「はははっ悪ぃ悪ぃ!!お前があんまりにもムカついたんでな、脅かしてやろうと思って」  男――フィーノは、悪びれた様子もなくアヒル拳銃をしまった。 クロードはむむっと怒りを爆発させて捲し立てる。 「本当に死ぬかと思ったんだからなっ!?無駄に脅かしてんじゃねえよ!あーもう何だよっこのアヒルっ!!クワクワ鳴いてんじゃねえよっ!!」 「えー・・・可愛いだろーアヒルー」 「そういう問題じゃないだろ!!」  クロードの悲鳴に近い叫びを軽く聞き流し、フィーノは崩れ落ちている彼に目線を合わせ、ふかしていたタバコを手に持ち息を吐いた。ぶわっと白い煙を直撃させられてクロードは咳き込みつつも散々な仕打ちに文句を垂れる。 「げほっげほっ・・・!!おま・・・いい加減に・・・!」 「二度と『死ぬ』なんて口にするなよ。可愛い甥っ子」  フィーノのクロードと同じ紫紺の瞳が、寂しげに細められた。 クロードははっとすると、唇をぎゅっと噛みながら搾り出すように声を出した。 「・・・ごめん」 「俺は・・・お前の知ってるとおり、裏の世界の人間だ。何時殺されるかわからねえだろ?お前の保護者としての役割を果たせなくなる前に、お前には強くなって貰わないといけねえんだよ」 フィーノは少し悲しそうな顔をしながら、クロードの頭をくしゃっと撫でた。
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