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「クロード様。まもなく終点でございます」
その声に、青年は目を覚ました。
うーん、と伸びをして、青年は欠伸をしながら声に返事した。
「あー・・・ごめん、寝てた?」
青年は何処かのパーティーに行くかのようなタキシードを着ていた。驚くほど似合っている。目を擦りながら、彼は右にある窓の外を見た。
ビルや街灯などの明かりで輝く夜の都会が広がっており、それは流れ星のように後方へと流れていく・・・。
彼は、列車の中にいた。
――ガタンゴトン、ガタンゴトン。
一定のリズムを刻みながら、大きな旅客列車は次の目的地へ走っていく。
綺麗な藤色の長髪をかきあげ、青年は深い紫紺の瞳を静かに細めた。
「・・・アヒル拳銃って卑怯だよね」
「はい?」
「ーーううん、なんでもないよ」
怪訝そうに返す車掌に、青年はクスッと笑みを向けて立ち上がった。そして茶色いトランクを右手で持ち、ボックス席を出て通路に出る。
――叔父さん。
俺は、何で生きてるんだろうな?
あんたは、俺を助けてくれたあんたは、もう――・・・。
「じゃあ、また」
青年は車掌へ最後にそう挨拶すると、星空のような大都市の街へと足を向けた。
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