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施術室から待合室に出ると、椅子に座って雑誌を読んでいた知佳が駆け寄って来た。
「ねえ、どうだった。痛いのは一瞬だけだったでしょ」
「え、ええ」
「やっぱり。彼女は腕がいいから……」
知佳に壁の姿見の前に連れて行かれる。
「ほら、彩夏さん、ピアスがとっても似合っているわよ」
私は姿見で自分の耳を眺めた。ファーストピアスはチタン製で5弁の百合のデザイン。シンプルだがいいアクセントになっている。傷口がふさがったら、どんなピアスが似あうかじっくり探そうと思った。
気持ちが落ち着いてきたところで、改めてさっきの『調整』は何だったのと言う疑問がわいてきた。二番目の痛みは耳たぶでは無かった。もっと奥の……。珠緒さんに聞いてみようとしたけど、カウンターに彼女の姿は無かった。
カウンターにいた別の女性から、消毒薬や痛み止めだと言う錠剤を渡される。珠緒さんを呼び出して話を聞きたいと思ったけど、そうしたら時間がかかりそうだ。知佳を待たせるのは申し訳なかったので、話をするのはあきらめた。
渡された薬を持ってエステサロンを出る。知佳とお茶くらいしたかったけど、何だか疲れてしまっていた。知佳にお礼を言って別れ、そのまま自分のワンルームマンションに帰った。
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