光と影

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 空飛ぶ竜人の中でも彼女の存在は異質を放ち、他の人とは明確な違いが浮き彫りになる。  彼女の翼は、まるで質量を持たないかのような軽快な揺らめきを持っている。  また煌々(こうこう)と輝くその輝きはまるでもう一つの太陽のようなのだ。  白い花の髪飾りが付いた、金色の長い髪を風に揺らしながら、その翼の光をまるで後光のように拡散する。  しかし、それは太陽と違い直視できないものではなく、むしろ目を惹(ひ)いてしまう。  それは、翼の神々しさ故(ゆえ)か、あるいは彼女の屈託(くったく)の無い笑み故か……。    用事が終わったのか、俺の方に向かいその笑みを浮かべ手を振ってくるラル。    大男の方も俺を見下ろしてくるが、ラルとは対照的にその顔には笑顔ではなく、侮蔑(ぶべつ)の色が浮かんでいる。    そう、まるで地を這う虫けらを哀れみ、醜いものでも見るかのような……。おおよそ同族に向けるべきではない類いの視線。もっとも、そんな目で見てくるのは奴だけではないけれど。  腕を組みまるで『何か言いたい事があればその翼で飛んでこい』とでも言うかのようだ。  あながち間違いではないだろう。俺の知るアイツはそういう事を言う奴である。 「翼……翼かぁ。まぁ……ねぇ」  俺はふと、校舎の窓ガラスに自分の姿を写してみた。  まず真っ先に眼に入るのは鼻まで伸びた前髪。だがそこまで量も多くないので、竜人にしては珍しい黒目もハッキリ見える。  顔の作りはわりかし気に入っている。といっても別に自分に酔っているわけでは無く、単に黒髪黒目という珍しい色が周りから浮いているが、それのおかげで周りとは一線を画しているから気に入っているのだ。……いや、まぁ……うん。クラスではそこそこ上位かな。  
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