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背丈は平均的だし、細マッチョ。普通ならモテてもおかしくは無い……のだが。
どちらかというと、嫌われ――いや、存在自体を無い者とされている節もチラホラ。
ふと、自分が背負っている重々しい機械を見つめる。
ちょっとした訓練に加え、この装置を小さい頃から扱っている内に、自然と理想的な筋肉(からだ)造りはできているわけだが、それは同時に、俺の存在が無き者とされている理由でもあるのだ。
無機質なソレには、血の通っていない模造品の翼が着いており、今は力なく折り畳まれている。
飛べる高さが制限されたソレは彼女……、ラルと比較するなどおこがましく、他の皆とも比較にならない偽物の翼。もちろんあの男の場所まで飛んでいく事もできない。
しばらく自分の姿を見ていたが、何をやっているのだろうと溜息が漏れ、首を振りながら両手を上げる。
「うんまぁ、モノはどうあれ、空を飛べる事には変わりないんだ。むしろ外すと寝るとき楽だし得してる。背中は翼通しの処理もしてないから、穴の開いていない学生服で長持ち!」
無理矢理マイナス思考を押さえ込むと、空を見上げるのを止め、街並みを眺める。
東の外部区域はそれほど遠くなく、空と交わって見える。とは言っても歩いて行こうとすればここから数日はかかるだろうが……。
北と南の外部区域も建物の隙間からわずかに見る事も出来る。
各外部区域の向こう側には、巨大な空が無限に広がるのみで何もない。
そう、それがこの国、この世界の限界。
時折、その地平線に巨大な翼が見え隠れする。
我らが“大地”である、錬金術で作り上げられたと言われるドラゴン……、ドラグリティの身体を宙に浮かせる原動力だ。
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