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教室に体育座りをしている子供達の背にある翼は、各々が特徴的だった。
他の多くの竜人同様、鱗のような質感の翼を持つ第一世代である司祭様とは違い、赤く燃えたぎる紅炎の翼、流動性すら見受けられる青き水翼などなど。
中には樹木のような翼の子もいるが、それが作り物ではないと言わんばかりに細部がしなやかに動き、所々皮膚のような質感が脈打っているように感じられる。
紛う事なき、旧人類から始まった竜人の、進化における第一世代の先。
ラルと同じ新たな世代の子供達だ。
「第二世代とはそれすなわち、龍の翼からも脱却した新たな生命である。これは新たな昇華であり、龍の神の思し召し(おぼしめし)でもある。君達も心するように。……まぁ中には第二世代と称されても、新しい翼を顕現させるわけでもなく、ただ竜人たる翼を捨て、退化しただけの『翼無し』もいるのを忘れぬよう」
「おーおー、こえーこえー。睨まれちゃったわ」
廊下に俺が居る事に気がついたのだろうか、司祭様は俺と目が合うと一睨みの後、付け足すかのようにソレについて触れてくる。
翼無し……その名の通り、翼のない竜人を指す差別用語。
この国で確認されているのはこの俺だけ。
つまり、俺専用に用意された侮蔑の言葉。
国家間を股にかける商会や業者からの噂レベルだが、他の国でも翼無しは生まれているらしいが、皆、母なる大地であるドラゴンの背から突き落とされるとか……。
なので、その生涯は短いらしい。
(あの人には頭が上がらないよなぁ、そう考えると)
『後は全てお前次第だ』そう言ったあの人の顔と声がいつも脳裏をよぎる。
まだ十七まで生きていられているだけでもありがたい事だ
それならば、翼無しの称号も甘んじて受けようでは無いか。
「まっ、いつまでここに居ても気分が悪くなるだけだし、さっさと行くかな」
司祭様に一度舌を出して挑発すると、俺は外部区域に急ぎ足で向かった。
その行為に効果があったかどうかは、後ろから聞こえる司祭様の声に怒気が混じり、『翼無しは我らが遙か過去に捨てた旧人類とほぼ同格。下等な生き物である』と怒鳴り散らしているのと、子供達の泣き声から察する事ができる。
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