第1章

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ずっと悩んでいたせいか、雨が本降りになっていたのに気づかず、身体がびしょ濡れになっていた。 後頭部がハンマーで殴られたようにガンガンと痛くなる。 このままここに居ても風邪を引く。足を動かそうとするのだが…どうにも倦怠感が勝って、足が動かない。 こういう時一番厄介なのは、自分のやりたいことがうまく行かない時だ。 特に蒼の場合は、自分の思い通りに行かなければ済まない性格をしているため、ヤケになることが多い。 物事うまく冷静に考えることが出来ないのだ。それに客観的に考えることなんてもってのほかだ。 そうだからこそ、近くには理解者が居なければならない。だが今の蒼にはそう呼べる人物も見当たらない。 まさにゲームでいう“詰んでいる”状態であった。 「How are you?」 意識が朦朧とする中、流暢な英語と共に、可憐な声が耳に届いた。 たったの一瞬だったが、雨の音が聞こえなくなる錯覚にまで陥った。
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