第1章

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「そんな事言ってるようじゃ『愚者』にはなれないよね。」 「…ッ、てめ……いつも何考えてんだよ…!」 しかめっ面で蒼が問うと、表情を悟られないように雪実は背を向けた。 蒼にバレないように、ふ、と笑みをこぼしてから堂々と応える。 「さぁね。今の蒼じゃあ、私の考えなんて到底わかんないだろうし。」 聞き逃さなかった。 蒼は最後の言葉が涙声になるのを聞き逃さなかった。 反射的に去りゆく雪実を止めようとしたが、既に相手は遠くにおり、追いつこうとする気力もなかった。
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