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今日は一体、どこをどう歩いたっけ。
そんな絶対覚えていないことを、真っ白だった頭の片隅で思い返そうとしてみる。
しかし案の定何も浮かんでこなくて、そのままその考えは薄れていった。
結果、頭の中は真っ白に元通り。
意識は問題なくはっきりしているーーつもりだった。
というか、意識がちゃんとあるという基準が、数週間でだいぶ低くなっているのだろう。
何も考えていない、何も見えていないに等しいこの状態でも、私はまだ“しっかりしている”と思っているのだから。
立ち止まり、ゆるりと周りを見渡す。
通行人は誰もいない。
車だって通ってない。
寂れた公園の隣、私はひとりぼっちだった。
ーーひとりぼっちか。
無性に笑いがこみ上げ、あたしは素直に頬を緩めた。
弱々しい、笑っているとは判断できないような表情。
...そして同時に、片方の目から雫が零れ落ちた。
その一滴の涙が、私の最後の記憶だった。
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