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「ケイゴ、聞いて。私たち三人は何があってもずっとずっと友達だよ。だから、だから早くカナコを追いかけて!」
「何言ってんだよ。あいつはなぁ、サキが死んで喜ぶような最低な奴なんだよ」
「バカ! ほんとにそんなこと信じてんの? 子供の時からずっと一緒にいたのに、カナコのこと何も分からないの?」
「でも、冗談でもそんなこと言う奴を……」
「お願いだから!」
どうして分かってくれないの。悲しさなのか悔しさなのか目から涙がこぼれてくる。涙を拭おうとすると、私の手の一部、指先の方が少しだけ消えていた。
もう残された時間は少ないんだ。
私はケイゴに分かってもらうために、ケイゴの唇にキスをした。
どうやら、ケイゴも落ち着いてくれたらしく、今なら私の言葉を素直に聞いてくれるかもしれない。
「ねぇ、ケイゴ。私もケイゴのこと好きだよ。でもね、私が一番好きなのは、ケイゴとカナコと三人でいる時間。私、それだけは失いたくないよ」
「サキ……身体が……」
もう、時間もあとわずかだ。
「お願いケイゴ。私のお願い、聞いて。私をいつまでも二人の心にいさせて」
あれ、なんだか辺りがぼんやりとしてきた。ケイゴ、ケイゴ、どこ……?
「サキ! サキ!」
ケイゴ、私はここにいるよ。
「サキ、ありが……」
あれ、声が聞こえないよ。ねぇ、ど……こ………………。
セミの合唱が響き渡る神社の境内。
「久しぶりケイゴ。お医者さんになれたんだってね、おめでとう。やるじゃん」
「あぁ、ありがとう。カナコはもうお母さんなんだろ。聞いたときはびっくりしたよ」
「まぁね。子どもの写真見る?」
「見たい、見たい」
「でも、その前に……サキ、久しぶり」
「そうだな、サキ元気してるか?」
二人とも久しぶり、私は元気だよ。
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