第1話 死にゆく少年

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 もう一度足元を確かめる。  ここから落ちれば、確実に死ぬだろう。  しかし、何を今更と思うが、一息に踏み出すのは怖い。  僕は後ろに下がり、崖から少し距離を置いた。  ここからなら、3歩進めば空中に足が出る。  躊躇しなくていいように、できるだけ下を見ないように進もう。  そう決意し、僕は足を踏み出した。  一歩目。   何も考えるな。ただただ、まっすぐ足を踏み出せばいい。 「ーーーーーーーぁぁ」  二歩目。  今際の際の幻聴か。甲高い音が聞こえる。だが、気にする必要はない。 「ーーーーーーーぁぁああああ」  三歩目。  を踏み出そうとした時、そのあまりにも大きな幻聴が頭上に迫り、僕は思わず空を見上げてしまった。 「ーーーーーーぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」  ……何かが落ちてくる。  黒と肌色を混ぜた何かの物体?  いや、これは……人?  あ、これもしかして直撃コース?  視界に迫る”何か”を前にして、僕は前にも後ろにも動くことができず、ただただ見上げるしかなかった。  そして、”何か”と目が合った気がしたんだ。  刹那、”何か”はとても美しいものだと直感が理解した。  僕は思った。  人生の終わりに、こんなに綺麗なものを見ることができてよかっ 「ひでぶっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」  “何か”は僕に派手に激突した。  ”何か”と僕は、初夏の太陽が照りつける峻険な断崖を錐揉み状に落ちていき、僕はいつの間にか意識を手放した。
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