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「……ん…うっ………ごはっ!」
塩水が気道を通り、喉元から盛大に飛び出していった。
うっすらと目を開けると、初夏の日差しが視界を占拠した。
どうやら、仰向けの状態でどこかに寝転んでいるようだ。
昼寝に失敗したときのように意識が朦朧としている。
右手にざらざらとした感触がある。
ほんの少し掴んで持ち上げ、顔の前に持ってきてみる。
白い……砂だ。
白い砂は風に吹かれ、サラサラと指の間をすり抜けていった。
左手には何か柔らかい感触がある。
少し湿っているようだ。
左手に少しだけ力を込めてみる。
持ち上げられそうにはない。
ただ、感触が心地良かったので、何度か掴んだり緩めたりを繰り返していると、
「ぅ……」という声が聞こえた気がした。
ゆっくりと顔を左に向けてみる。
目の前に、顔があった。
黒くて長い髪。
スッと整った鼻。
薄くも厚くもないちょうどいい唇。
目は閉じられていて、表情は若干苦しそうに見えるが、頬にはうっすら赤みがさしている。
見たこともない黒い服を纏っているが、何箇所も破れていて、覗いた柔肌からは血が出ているようだ。
胸は控えめなようだが……これは……女の……子?
「……ぁっ……ぅっ………」
女の子と思しき人が、顔だけをこちらに向け、仰向けで倒れている。
声の主はやはり彼女のようだ。
僕の左手は、その感触の心地良さに身を委ね、相変わらず掴んだり緩めたりを繰り返している。
僕は、上から下、ゆっくりと自らの左手の先に視線を移していった。
左手の先には……
……えっと、これはスカート?がめくれて、白い砂よりも真っ白な布があって、僕の左手がその上にあって、中指と薬指の先っぽに布の下の方が当たってて、そこに少しだけ細い窪みがあって、これは、えーと、えーと…………パン……ッ!!!!!
「おわぁっ!!!!!!」
朦朧としていた意識が一気に覚醒した。
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