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「ごめんなさいごめんなさい何も見てません何も触ってません何もしてませんごめんなさいわざとじゃないんですごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!」
僕は飛び起きると同時に全力でバックステップ。
さらに、かがむと同時に上半身を投げ出し頭と両手を砂地にこすりつけながら何度も謝っていた。
確か、このポーズは東の方の国に伝わる五体投地と言われるもの、だった気がする。
エスパニアの習慣には無いが、なぜか本能が「そうしろ」と言っている気がした。
覚醒からここまでの動き、0.15秒。
しかし、予想に反して何のリアクションも無い。
恐る恐る目を開けてみると、そこには先ほどと変わらず黒髪黒服の女の子が横たわっていた。
「あのー……」
声をかけてみるも、やはり動きはない。
小さいけど声が出るくらいだから、息はしているみたいだ。
その後も何度か声をかけたが、全く起きる気配がない。
そこで気づいた。
周りを見渡す……ここは、セトの街の南東にある海水浴ができる砂浜だ。
ちなみに、海開きはまだなので、辺りには人っ子一人いない。
穏やかな波が白い砂浜に寄せては返しているだけだ。
「なんだ、僕は生きてるのか……あそこから飛び降りたら確実だと思ったのに、とんだマヌケだな……」
しかし、どうしよう。
目の前には身体中傷だらけで横たわるボロボロの女の子。
もしかしたら、この子が飛び降りる直前に降ってきたのか。
事情はよくわからないが、放っておいたらまずそうだ。
今晩は満月だから、ここは夕方になると満潮になってしまう。
その前に安全なところに避難させないとな……
それに……死ぬのは僕一人で十分だ。
ここからなら僕の隠れ家の方が近いし、一度手当をして、街に送り届けるか。
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