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この世に住む人間には、2つの種類が存在する。
一つ目は、『ヒト』
特筆した能力も、運動神経も持たぬ人間の事であり、全人口の約8割が、コレに該当する。
もう一つは、『暗愚』
人間として…否、生物として並外れた運動神経と、科学を無視した『罪』と呼ばれる異能を持つ人間の事である。
『ヒト』の身に突然、能力と、利き手の甲に髑髏の紋章が出現し、『暗愚』は生まれる。
暗愚が誕生する理由は未だ解明されておらず、神様が無作為にその場の気分で宿す。という実に非科学的な理由が信じられている。
そんな暗愚の最大の特徴は、人権がないことだ。
そして、ヒトには暗愚ならば殺しても構わないという権利がある。否、暗愚は殺されて当然という認識がある。
民間人であれ、暗愚を見かけたら直ぐさま殺せ。
これが現代社会の常識だ。
友達であろうと、夫婦であろうと、親子であろうと家族であろうと、その関係が『ヒト』と『ヒト』から、『ヒト』と『暗愚』になった途端、全てが崩れる。
『 ヒト』は『暗愚』を必ず殺す。『ヒト』は『暗愚』に殺戮対象という認識しか持たない。どんなに強靭な鎖であっても、種類が分かれた途端、鎖は千切れる。
常識は狂気であり、その常識に誰一人として疑問を抱かない。
そして今日もまた、新たな被害者が誕生する。
神によって『暗愚』という哀しきレッテルを貼られた、哀れな被害者が……
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