家族と体温。

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三年A組二十七番、中園しろです。発表を始めさせていただきます。 皆さんのお母さんはどんな手のひらをしていますか。あたたかい手でしょうか。冷え性のお母さんでしたら、きっと冷たいでしょうけど、でもきっとぬくもりはあるのでしょう。 わたしのお母さんの手のひらはとてもちいさいです。わたしは今年でハイ・スクールを卒業します。この間十八歳の誕生日を迎えました。そんなわたしの手のひらより、とてもちいさいです。 わたしのお母さんは、十歳頃の外見をしています。 わたしは、アンドロイドに育てられた子供です。 わたしを産んだ母は、父の母によって殺されたと聞きました。わたしの母は知能指数が低く、そんな母が神童と名高い父の子供を産んだことを許せなかったと、そんな理由で、わたしの母は殺されました。 父とは、年に一度だけ会います。母は賢くはなかったけど、情の深い人だったと、父は言います。そうです、父はそこで涙ぐんでいる人です。泣き虫なんですよ、意外と。皆さんの前では、きっと冷静沈着な役人なのでしょうけど。 ―――失礼しました。話が逸れました。 わたしはアンドロイドに育てられました。政府の実験というやつです。わたしを育ててくれたアンドロイドは、緑の目がとても綺麗な、笑う時の声がとても穏やかな、そんな人です。人、というのはおかしいんですけど。 2000年代も終わりに近付き、オーバーテクノロジーと過去の人が呼んだ技術はもう当たり前となりました。そんな中で問題となっているのは、家族、親戚、友人などの間から薄らぎつつある「情」だと、言います。
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