死なばもろとも墓場まで

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「その時の物よりも大きい雪達磨を作る約束をしたんだが、結局それきりだった。それを、この雪を見た途端に思い出したんだと」  鬼の副長も沖田に掛かると形無しだ。  斎藤は、土方が沖田を実の弟のように可愛がっている事を知っている。  沖田もまた、土方を兄のように慕っていた。 「それで駄々を捏ねられて、こんな夜分に雪達磨作りですか」 「あいつは作れとは言っていない。ただ、昔話をして嫌味を言ってきただけだ」 「じゃあどうして作っているんです? こんな物を今更……」  そう言いかけて、斎藤は言葉を止めた。  土方はそれ以上何も言わない。ただ黙々と作業を続けている。 (ああそうか。今更じゃなくて、今だから、なのか……)  このような生業をしていると、いつも自分達は死と隣り合わせである現実を突きつけられる。  ――剣と共に生き、剣と共に死ぬ――  この生き方に抗うつもりなど無い。  新選組(ここ)に居る皆も、その覚悟はとうに出来ているはずだ。  しかし、沖田は違う。  今は病と言う、謂わば剣とは無縁の敵を目の前にして抗う術を無くしているのだ。  剣こそが総てであった彼だからこそ、それは不本意極まりないものであるに違いない。
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