死なばもろとも墓場まで

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 その日の朝、屯所はこの雪達磨の話題で持ち切りになっていた。  皆非番なのかと思う程、ひっきりなしにざわざわと煩い。  とても眠れたものではないと、斉藤は仕方なく早々に起き出すしかなかった。 「一体誰が作ったんだ? 隊の中の誰かか?」 「まさか、近所の子供が夜中にわざわざ屯所に入り込んで作ったとでも?」 「いい大人が作ったのだとしたら、まあこの寒い中で酔狂にも程があると言うものだ」  皆好き勝手に話している。  側に当事者がいるとも知らずにだ。 「あ、(はじめ)さん、お早うございます」  ふいに後ろから声を掛けられた。  沖田総司――この話題の原因を作った張本人のお出ましだ。 「ねぇ見ましたか、あの大きな雪達磨。隊の中にも暇な人がいるものですねぇ」 「もしかするとその暇人のお陰かな。あんたも今朝は調子が良さそうだ」 「そうなんですよ。実は丁度昨晩に、こんな雪達磨が見たいなあ、なんて話を土方さんとしていたんですよね」  悪びれた様子など微塵も無いなと、斉藤は話し相手をしながら苦笑する。  分かってはいたが、こいつは明らかな確信犯だ。  いかにもわざとらしく、総てを理解した上でこんな話をしている。
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