死なばもろとも墓場まで

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「あ、そうだ。一さんは体調を崩したりしていませんか」 「いや別に。少々寝不足ではあるが、特には」 「そっか。じゃあ、鬼の霍乱ってやつかな?」  ああ、やはりそうなったかと、あの時に聞いた大きなくしゃみを思い出した。 「今から鬼のお見舞いに行くんですけど、一さんも一緒にどうですか?」 「俺は遠慮しておくよ。それはきっと、からかいに行くの間違いだろうからな」 「ええ、まあね。だってあの人、普段は人の事を散々に病人扱いしてくれるんですから。当然この機を逃すつもりはありませんよ?」  子供のように無邪気な笑みを浮かべて、心から嬉しそうに沖田ははっきりとそう言い切った。  斉藤はと言えば「正直、副長に同情するよ」と、やはり苦笑しか出て来ない。  しかしながら、これは二人の間にある絆の為せる業なのだろう事も理解しているつもりだ。 「あんたはもう、あれを作った人間が誰だかは分かっているんだろう。俺はその誰かさんから、この件は墓場まで持って行けと言われている」 「やっぱりかぁ、一さんには迷惑を掛けましたね。勿論、私もこの件は墓場まで持って行こうと思っていますよ。まあ、墓に一番近い私が言うのは狡いかもしれないけれど」  その自虐的な台詞には、思わず眉を顰めてしまう。  新選組(ここ)ではあまりに意味を成さない、そう思うからだ。 「全く狡くはない。俺の方が先にくたばる可能性だって無きにしも非ずだろう」 「いやあ、それは無いな。あんたは絶対に長生きするよ」 「何を根拠に言っているんだ?」 「何となくだよ、何となく」  そう言って笑った沖田の顔が、やけに印象に残ったのは何故だろう。
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