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それから、江戸幕府の崩壊と共に新選組は衰退の一途を辿った。
近藤は河原で処刑され、その首が晒された。
沖田は結局、一人病で亡くなった。
土方は最北の地で最期まで抗い、そこで討ち死にを果たした。
激動の時代に翻弄されながらも、己の信念に従い駆け抜けて行った男達。
そんな彼らと共に、ずっと先陣を切り渡って来たつもりだった。
それでも自分は未だ生きている。
その刻が止まる事はなかった。
その後は恩義ある会津藩と命運を共にした。
そのまま妻を娶り、子を成し、孫まで出来た。
何度となく名を変え、職を変え
気付けば時代は、江戸から明治、更には大正へと移り変わっていた。
「本当に墓場まで持って行く事になるとはな」
墓場まで持って行かなければならない秘密など、それは今までの職業柄いくらでも有る筈だった。
ところが脳裏に浮かぶのは、今となってはどうでもいい些細な約束事だけだ。
『一さん、もう話しちゃってもいいんですよ?』
そんな沖田の声を聞いた気がする。
いよいよか――そう悟った。
ああ、これで肩の荷が下りる。
身動きの取れなくなった身体を家族に支えられながら床の間へと坐す。
凛と姿勢を正した斎藤は、眼光鋭く真っ直ぐに前を見据えた。
大正四年 九月。
移ろう季節は突如吹いた一塵の風を伴い、澄み切った浅葱空へと天高く舞い上がって行った。
~終~
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