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「危ない。まあ、こちらも慣れて来たからフォローは万全だけどね」
私の両手ごと包むようにコップを支えた彼の両手の感触に胸の鼓動が跳ね上がる。
ドキドキをごまかそうと話の糸口を掴んで早口で喋り始めた
「ごちそう様です。
あ、そう言えばお礼も言ってませんでした。
こんな素敵な浴衣を着せて頂いてありがとうございます。
紗綾さん、わざわざ来てくださったのにそのまま帰って行かれて、気分を害されなかったでしょうか?」
「阿弥津?なんであの人が?」
「だって、真崎さんの彼女でしょ?」
「編集者だって紹介したでしょ?」
「だって、ケイって呼んでたし……」
「大学の文学サークルの先輩だからね。その頃から呼び捨てにされてるよ」
「先輩?そうだったんですか」
「なんか話が可笑しいと思ってたら、そんな勘違いをしていたなんてね」
間近な笑顔と触れ合う腕と依然包まれたままの手が言葉を奪う。
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