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厨房に向かう私の背後で、彼女がひそひそと彼に耳打ちする気配がした。
耳が、囁く彼女の声の断片を勝手に拾ってしまう。
「例の…ふふふ」
例の、ふふふ?
私のドジな勘違いの顛末をネタにして笑っていると思うのは、自意識過剰の被害妄想だろうか?
その本命らしい彼女は料理をしない人で、真崎氏が私に料理を頼んでいる事を実はよく思っていないとか?
そんな彼女のご機嫌を取るために、如何に私がドジでまるで対象外なのかを説明済み、と考えると筋が通るじゃないか。
いや筋が通ってもちっとも嬉しくない。
あの余りに痛い自分の言動を『パニック状態で良く覚えてない』とか何とか誤魔化したけど。
まさか、それも教えてたりしないよね?
キスを迫られたなんて……
彼女に言うような人じゃ
ない……
よ、ね?
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