枠を超える

2/6
前へ
/213ページ
次へ
  「んんっ……」 ぐっと押し込まれて声が漏れたけど、晴人に口を塞がれていたから抑えられた。 今ので……全部入ったんだ。 もう既に入りきったと思っていたから、僕の思い違いだった事に気づかされる。 「……入ったよ」 僕の考えてたことを読んだかのように、口を離した晴人が言った。 「……うん」 「痛く、ない?」 「……うん」 晴人に聞かれて、急に恥ずかしさが襲ってきた僕は、小さな声で返す。 この距離には慣れているはずなのに、いつもと違うから落ち着かないでいる。 「あー……なんか、凄くいい気分」 そわそわしてる僕と違って、晴人が嬉しそうに言ってきた。 けれど、余裕があることに少しだけムッとしてしまう。 「……随分、余裕……なんだな」 「余裕? そんなの、あるわけ無いよ」 思ったままを口にすると、間髪入れずに晴人から予想外の言葉が返ってきて、目を見張った。 「う、そだ……」 否定をする為に出した声は、自分でも分かるぐらいに力を失っていた。 「ずっとこうしたかった相手と、初めて繋がったんだよ? 余裕なんてないでしょ」 「んっ……」 真っ直ぐな晴人の言葉に、急にたじたじになってしまった僕は、顔を背けようとした。 けど、それよりも先にキスされて叶わなかった。
/213ページ

最初のコメントを投稿しよう!

799人が本棚に入れています
本棚に追加