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舌が入る深いキスを交わして、僕が逃げない事が分かったタイミングで離れていった。
「くっついてるから、分かるでしょ? 俺の心臓、バクバクいってる……」
背中から伝わる鼓動の音を意識すると、確かにリズムが早い気がした。
けど……。
「は、ると……」
「何?」
ジッと見つめる晴人の視線に合わせる勇気が出なくて、少しだけ逸らしてから再び口を開く。
「ぼ、くも……心臓の音、煩くて……どっちのか、分からない……」
晴人の目を見てハッキリ言えたらいいけど……まだ僕にはその勇気が沸かなくて、詰まらせながらだったけど言えた。
「……困るんだけど」
ぽつりと言った晴人の言葉に、今度は後悔が押し寄せてくる。
思ったことを言っただけなのに、それが晴人を不快にさせてしまったのかもしれない。
改めて顔を見ると、眉間にしわを寄せてるような気もする。
もしかすると今までも、僕が気にしてない所で晴人はこうして不快に思った事があったかもしれない。
「ごめ……」
段々と悲しい気持ちになってきて、僕も顔を顰めて謝った。
「……今のは、怒ってるとかじゃなくて。その、時雨兄さんが可愛いこと言うから、俺の理性切れそうで困るってこと」
晴人が言った言葉にまた、僕は驚きを隠せなかった。
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