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「そういう所は、相変わらずだね」
何を話していいか分からず、混乱していると晴人に声を掛けられた。
「……情けないってこと?」
「違う。可愛いってこと」
「な、なに言っ……」
自分の情けなさに落ち込んでいたら、晴人の口からは別の答えが返ってきて変に慌ててしまう。
そんな僕の様子を楽しむかのように、今度は僕の耳を触り始めた。
「可愛いって言ったの。今までだって、ずっとそう思ってたし……」
顔まで近づけられて、逃げないままそっと目を閉じる。
「んっ……」
掠めるように唇に触れた感触が、直ぐに伝わってきた。
「逆に聞くけど……時雨から見て俺は、どんな目で見てると思ってた?」
「……分からない。僕はずっと、晴人に嫌われてると思ってた。だから……確認するのが怖くて、顔もまともに見れなかったから……」
唇を離した後に振ってきた問いかけに、僕は真面目に答える。
もう過去の事だし話題に出すのもどうかと迷ったけど、晴人と距離が縮まったからこそ、正直でいようと思って口にした。
「それって……中学の時のこと?」
「うん。でも、もう過去のこ……」
これ以上過去の話題をしてもしょうがないと思った僕が切り上げようとした瞬間、耳を触ってた晴人の手が今度は僕の手を握ってきた。
いきなりの行動に思わず言葉を止めた僕は、晴人の目を見てごくりと唾を飲み込んだ。
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