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「……そう、だったんだ」
数年経って聞かされた事実は、拍子抜けしてしまう内容だった。
あれから三年近く、晴人とぎくしゃくしてしまった事を思うと、もっと早く言ってくれたらいいのにとも思ったけど、直ぐ言われても今みたいに納得出来たかは怪しい。
「ごめん。あの時は自分の気持ちに自覚してなかったから、おもちゃを譲ってくれた時と同じように考えてた。けど、時雨が彼女をとられた事に悲しんでるって思ったら……余計に俺の胸が苦しくなるだけだった」
ギュッと指を絡めた手に力をこめられたから、僕も握り返す。
晴人も自覚が出来てなかった分、思い悩んで苦しさを抱えてたんだろう。
「……晴人は、いつ自覚したんだ?」
「俺は……リビングのソファで寝てる、時雨を見たとき、かな」
興味が沸いて、今度は僕から問いかけてみると、予想外の返事がやってきて、パチパチと瞬きを数回してしまった。
「……それって、いつ?」
「俺があの嘘を吐いてから、数日後だったかな」
聞いたところで僕がソファで寝たことは何度もあるから、特定出来そうにない。
「僕が寝てるのを見て、自覚したのか?」
けど、僕にとってはどうでも良かった。
思い出すこと以上に、今の僕は晴人が自覚した瞬間を知りたくて、問いかける。
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