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わっと声をあげて、エリカが泣きだした。 「もうヤダ! やだよ。こんなとこ!」 まあ、たしかにそうだ。 とにかく今は逃げだすにかぎる。 「ここを出よう」と、ユウヤは提案した。 ヒロキもアスヤもキリトも、そくざに、うなずく。 今度はヒロキが提案する。 「じゃあ、窓、わろう。それが一番、早いだろ」 まず、窓を破壊できそうなものを探す。診察室にあった折りたたみ椅子。受付の花びん。ブロンズ像。 診察室には窓がない。 ホールの窓は強化ガラスなみに厚い。四角いブロック状のガラスを組み立ててある。とても人力では、こわせそうにない。 病室の窓をたたいてみた。イスや花びんやブロンズ像で。 イスでは、ビクともしない。花びんは、花びんのほうが割れた。 ブロンズ像は窓をこわした。が、たたいたところに、クモの巣のようなヒビ割れができただけだ。なかの金網がそれ以上の損壊をゆるさない。 疲れた声で、ヒロキが、ぼやく。 「ダメだ。ここ、ふつうの病院っていうより、内装とかホテルっぽいもんな。セキュリティの面が強化されてるんだ。なんか、金持ち用の養老院とか、そんな感じ」 そう。もとは保養所か何かだったようだ。 「外から侵入できないように、頑丈に作ってあるんだな」 いちおう、となりの病室の窓も試した。が、やっぱりムリだ。もっと、きゃしゃなガラス窓か、ほかの出口を探さないと。 ユウヤは言った。 「最初に話してたみたいに、二階の窓から出られないか、しらべよう。さっきは途中で寝てしまったから」 それで、みんなで二階に上がっていく。 エリカの見た人影のことがあるから、みんな、ビクビクだ。でも、階段をあがっても、誰もいない。 「相手も移動してるってことか?」と、ヒロキは警戒している。 アスヤは、やっぱり、消えそうな細い声をだす。 「おれたちのこと、観察してるんじゃないか?」 もちろん、そうだと思う。それがマサルかどうかは、ともかく。相手がユウヤたちに敵意を持ってるのは確実だ。 さっきまで寝ていた手前の病室に入った。 さっまでと変わったようすはない。 とりあえず、みんなは、ほっとする。 窓をしらべると、いやなことがわかった。二階の窓には、外にステンレス製の格子がついている。格子のすきまは五センチだ。窓はあくが、これじゃ出られない。 ヒロキが、いらだった声をだす。 「なんだよ、これ。牢屋かっつうの」
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