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たとえ、相手がマサルでも、わけもわからず殺されるわけにはいかない。
いや、むしろ、マサルなら、話が通じるかもしれない。
そっと近づいて、さっき動いたドアの前まで来た。
ヒロキが命じる。
「一、二、三で、とびこむぞ」
ユウヤとキリトは、うなずいた。
アスヤも、ガタガタふるえているが、ついてきている。
「一、二、三ーー」
四人で、いっせいに、とびこむ。
ベッドのかげで、何かが動く。
しゃがんでいるのか? ずいぶん、小さい。
ベッドの下を通りぬけて、逃げだそうとする。
「エリカ! ちゃんと光、向けろよ」
「そっち、行ったぞ!」
暗がりを、懐中電灯の光が、めまぐるしく、まわる。エリカの反応が遅いから、見たい場所が、よく見えない。
四人で逃げまわる相手を追いまわす。
きゃッと、悲鳴がして、懐中電灯が、ころがった。エリカをつきとばして、逃げていく人影が一瞬、見えた。
ユウヤたちは追った。階段にたどりつく前に、その相手をつかまえることができた。
「つかまえたぞ!」と、ヒロキが大声をあげる。
ユウヤは懐中電灯をひろいあげ、その人物をてらした。光のなかに浮かんだのは……。
あッと、アスヤが声をだす。
「この子だ!おれが見たの」
小さな女の子だ。きれいな黒髪をおかっぱにして、とても整った顔立ちをしている。カワイイというより、子どものくせに、美しい。
「なんで、こんなとこに子どもが……」
女の子はヒロキの手をふりきろうとする。が、とうぜん、子どもの力で逃げだせるはずもない。すると、泣きだした。
「わたしを殺すの? わたしが悪い子だから?」
みんなは、たがいの顔を見あわせた。
「ただの迷い子じゃないか?」
「こんな山奥で?」
「親に捨てられたとか」
泣き声が激しくなる。
ナツキが女の子のそばに、しゃがみこんだ。
「大丈夫よ。なんにもしないからね。あなた、名前は?」
「ルナ」
「ルナちゃんね。お父さんとお母さんは?」
「……パパとママは、ルナのこと、いらない子どもだって。だから、殺すんだって」
ヒロキは平気で心ないことを言う。
「ああ、やっぱ、捨てられたんだ」
ナツキはヒロキをにらんだ。そして、ヒロキの手をたたいて、ルナをつかむ手を離させる。
「もう大丈夫よ。お姉さんたちといっしょに行こうね。安全なとこまで、つれてってあげるから」
そう言って、ナツキはルナの手をにぎった。
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