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二階の病室に全員で集まる。
今度はカギをかけて。
とはいえ、みんな、寝るどころじゃない。
それぞれ、ベッドにすわったまま、神経質に耳をすましていた。
「とじこもったからって、逃げられないんじゃ、どうしようもないよ」
ヒロキが、ぼやく。
ユウヤは考えていたことを打ちあける。
「わかってる。外に出られそうなのは、三階の非常口だけだ。朝になったら、そのへんのシーツとか、カーテン使って、ロープ作ろう。それで、なんとか下におりる」
そくざに、エリカが不平を言った。
「ムリだよ! そんなの。あんたたちはいいよ。男だもんね。でも、わたし、そんなことできないよ」
「それに、この子は、どうするの?」と、ナツキも反論する。
「ロープが、たくさん作れれば、腰のとこ、くくって、上から下ろせるよ。もしできなくても、誰か一人が外に出れば、救助を呼びに行けるだろ。スマホさえ使えれば」
「そっか」
「そうだね。それなら……」
エリカやナツキも納得した。
「なんで朝になってからなんだ? 今すぐでも、よくないか?」
ユウヤは、こう答えようとした。
懐中電灯の電池が、いつまでもつか、わからないからだと。夜が明けて外が明るくなってからのほうが作業しやすい。それに、マサルにしろ他の誰かにしろ、襲撃者の姿も見つけやすい。
なのに、口をあけた瞬間、自分の口から思ってもみなかった言葉が、とびだしてくる。
「やつらは夜行性だから」
ヒロキが不審そうに、こっちを見る。
「夜行性? やつら?」
我に返って、ユウヤは首をふる。
「いや……殺人者は暗闇にまぎれて近づくのが有利だろ? そういう意味」
「ああ、うん」
おかしく思われなかっただろうか?
ちょっと気をぬくと、こうだ。
でも、今ので、わかった。
(やつら、夜行性なんだ)
ユウヤたちを狙ってるもの。
やつらというからには、単体ではない。
(もっと、わたしに、しゃべらせてくれてもいいのよ? いろいろ、教えてあげる)
君はーーレラだね?
(そう。わたしは、レラ)
君はもう、死んでるの?
(今のわたしは生きてもいないし、死んでもいない)
どういうこと?
返事はなかった。
レラの気配が遠くなる。去っていったらしい。
(レラ。やっぱり、そうなんだね。おれに姿が見えるってことは)
子どものころから、そうだった。
ユウヤの秘密。
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