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そう考えて、ユウヤは、またドキリとした。自分は今、ここに入れば、みんなが死ぬと思った。ここは不吉だ。よくないことが起こる。
やっぱり、よそうと言いかけたとき、キリトが鉄柵を押した。
鉄柵には『私有地につき立ち入り禁止』と、札がかけられていた。しかし、カギはかかってなかった。
キリトがかるく押しただけで、かんたんに、ひらいた。
「みんな、もう中に入ったのかな」
「たぶん」
キリトは足早に建物に近づいていく。
ユウヤは、まだ、ためらっていた。
足が重いなと思えば、いつのまにか、白い大きな犬が、ユウヤのズボンのすそをかんでいる。必死に、ひきとめようとしている。
(そうだ。ひきかえそう)
ユウヤは決心した。
キリトの手をつかんで、むりやりでも、ひっぱっていこうと思った。
そのとき、木かげに、ちらりと人影が見えた。稲妻のなか、一瞬、青白く浮きあがる。
かなりの距離があったにもかかわらず、しっかりと目があった。一瞬のはずなのに、その瞬間が永遠に思えた。
(なんて、目だ……)
美しい。が、このうえなく悲しげな。
ぼんやり立ちつくしていた。
「ユウヤ?」
キリトに話しかけられて、我に返る。
「あ? ああ……」「どうかした?」
「今、そこに誰か立ってなかった?」
「よせよ。誰もいないよ」
人影は見えなくなっていた。
しかし、ユウヤの目には、青ざめた残像が焼きついていた。
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