5

7/12
前へ
/58ページ
次へ
たしかに、そうかもしれない。 ルナにしてみれば、どれか一体が生きていれば、『自分』は存在し続けることになる。 「でも……子どものときとは、ずいぶん、ふんいきが違ってたね」 「それはシオンのマネしてたからだわ。ルナはシオンの声色を使うのが特技なのよね」 「斧は、どこから出てきたんだ? 病室のなかにはなかった」 「ルナが持ちこんだんでしょうね。病室に侵入するとき」 「ここって、そんなに、あちこちに斧とか、ころがってるんだ?」 「銃はないから安心して。シオンは刃物が好きなの。ムダに買い込んでくるから。きっと、そのへんに放置してたのよ」 ユウヤは、ため息をついた。 まともな思考では、ついていけない。そんなことは、とっくにわかっていたが……。 「わかったよ。じゃあ、こいつがルナの最後の一体? これを始末すれば、すべて終わり?」 レラは笑う。 なぜか、悪魔のように見える笑み。 悪魔は悪魔でも、サキュバスだ。 「待って。これは、ルナじゃないわ」 「ルナじゃないって……」 「シオンよ」 ユウヤは首をふった。もう、わけがわからない。 「おれが前庭で見たときと、姿が違う」 「そう。それが、シオンが現状に満足しないわけなの」 レラは少女の姿をした『シオン』のもとに歩みよる。 「わたしたちの今の体は、まったく別人の細胞の遺伝子を組みかえて、クローン化したものなの。 そして、一体化したとき、わたしは十五さい。シオンは二十五さい。 だから、成長期の体と成体と、情報が二重になってるのよね。 かんたんにいえば、気分で見ためが変わってしまうの。少女のわたしと、成人のシオンと。 わたしたちの魂が完全に融合してしまえば、こんなこともなくなると思うけど。 わたしは今のままでいいの」 そう言って、レラはクサリにつながれたシオンのポケットに手を入れた。ポケットから鍵のたばが出てくる。 「ほら。マスターキーを持ってる。ルナに捕まるなんて、ヘマをしたのね。シオン」 「てことは、これがルナ一号で、実験のために捕まえておいたっていうのは……」 「ルナのついたウソよ。シオンのふりして、あなたに、わたしたちを殺させようとした。自分の手で創造主を殺すことは、さすがに、ルナにもできなかったってことね」 「なんかもう、どれがウソで、どれがホントのことか、わからない」
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

86人が本棚に入れています
本棚に追加