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「わたしのことだけは信じて。ね? ユウヤ。さっきも、そう言ったでしょ?」
甘い笑顔。
なんだろう。今度は死体のレラに、やけにドキドキする。それは、もちろん、最初から惹かれているのだが……。
レラは鍵のたばから、シオンの手かせを外す小さなカギを見つけた。そのカギで、シオンの手かせをはずす。
「さあ、解放してあげる。かわいい白雪姫。でも、もう、おイタをしちゃダメよ? 悪い子には、お仕置きしますからね」
ふふふ、と、ふくみ笑って、レラはシオンの頬にキスをした。
キリトが心配そうな声をだす。
「そいつ、離して大丈夫なのか? シオンって、とんでもないマッドサイエンティストなんだろ? なにするか、知れたもんじゃない」
「こうしておけば、大丈夫」
レラは壁ぎわの細長い台の上から何かをとりあげた。手錠だ。
よく見ると、ここは拷問室らしい。それっぽい道具が、ほかにも、たくさん、ならんでいる。
レラはシオンに手錠をかけた。
レラの体は死体だから、着ているのは病院の検査着だ。そのポケットに、手錠とマスターキーのたばを入れる。
「とにかくさ」と、キリトが言った。
「あと一体で、ルナは全滅だろ? 早く始末しよう。それで、おれたちを帰らせてくれ」
「そうね。もう夜が明けたかな? だとしたら、ルナは地下に帰ってくる。ルナは日光を嫌うの。生前の最初の体が光に弱かったから」
腕時計を見ると、五時前になっていた。今の時期なら、外はもう明るい時間だ。
レラにやられた成人のルナの死体を残し、拷問室を出た。
少女のシオンは、レラに手をつかまれて、おとなしく、ついてくる。 話に聞くシオンにしては、ずいぶん従順だ。手錠されたうえ、口もふさがれてるから、しかたないのだろうが。
ユウヤはキリトに懐中電灯を渡し、両手で上げぶたをしめた。けっこう重い。
「それにしても、ここって、なんのための部屋なんだ? 病院の地下に拷問室って……」
「ああ、ここね。シオンが実の父親を閉じこめておいた部屋よ。もともとは、ただの物置だった。
復讐のために、ここに父を閉じこめて。
毎晩、ちょっとずつ『手術』して、遊んであげたの。
まあ、しかたないよね。シオンが悪魔になったのは父のせいだから」
陰惨な内容を、レラは楽しそうに話した。ウキウキして見える。
今までのクールな印象と何かが違う。
「レラ。君、なんか変だ。さっきから」
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