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玄関前に屋根付きの車寄せがあった。 みんなは、そこに立っていた。ここなら、とりあえず雨はしのげる。 そのまま十分はすぎただろうか。 「雨、やまないなあ」 ナオトが、ぼやく。 「てか、風も強くなってきた。マジで風邪ひきそう」 たしかに寒い。それに、いちだんと暗くなってきた。 「やみそうにないな。なか、入ろう」と、ヒロキが言う。 やめたほうがいいと、ユウヤが止めるべきだったのだろうか? でも、このとき、ユウヤは考えごとしていた。さっき見た人影について。 「ええ? 入るの? ここ、ヤバくない?」 ガタガタ歯の根をならしながら、エリカがぼやく。その声は小さい。本気で反対しているわけではない。 ナオトが、からかうように笑った。 「ヤバいって、なんだよ? 平気だって。もう使われてないっぽいし」 「ええっ。だからだよぉ。なんか……怖いよ」 「ほんと、エリは怖がりだなあ。大丈夫だよ。おれが守ってやるって」 ユウヤが我に返ったのは、みんなが玄関扉をあけて、なかへ入りだしたあとだ。ヒロキを先頭に、ぞろぞろ建物のなかへ入っていく。 しかたないので、ユウヤも最後尾から、ついて入る。もしかしたら、このなかに、さっきの人がいるかもしれない。そう期待して。 「なんだよ。暗くて、なんも見えん」 「あ、おれ。懐中電灯、持ってきた」 マサルがリュックから懐中電灯をとりだした。さすが、準備がいい。 「いいじゃん。貸して」 ヒロキがとりあげて、スイッチをつける。 薄闇を黄色い光がてらす。 そこは病院だった。正確に言えば、かつては病院だった。備品はこわれてるし、クモの巣が張りまくってる。 女の子たちが悲鳴をあげた。 「やだ。やっぱり、怖いよ」 「そうだよ。出よう」 女の子がさわぐほど、ヒロキはおもしろがりだした。前から、そういうヤツだった。 「でも、ほら。外より寒くないし。毛布かなんかあるんじゃない?」 「こんなクモの巣だらけのとこの毛布なんかヤダ。だから、ヒロキは彼女できないんだよ」 へたにエリカが反論するものだから、ヒロキは意固地になった。 「風邪ひくよりマシじゃん。どうせ、ナオトが守ってくれるんだろ」 懐中電灯を持ったまま、一人で奥へ入っていく。 残りの七人は顔を見あわせた。 「わたし、行かないよ」と、エリカ。 つられたように、ナツキも首をふった。
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