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レラが、つぶやく。 「なんてこと、してくれるんだ。帰る体がなくなってしまった……」 その声……男だ。 ルナの成体がシオンのふりしてたときの声。 (なんで……なんで? これは、レラのはず……) ぼうぜんと、ユウヤは死体のレラを見つめた。レラはすべるように、ナツキのそばへ歩いていく。 「シオン? シオンなのね?」 ユウヤは思いだした。 さっき、地下に来たあたりで、急にレラのふんいきが変わったことを。 怖いくらい妖艶になった。 「途中から、変わってたんだな……レラと、すりかわってた」 シオンは冷めた目で、ユウヤを見る。 この世のすべてが、どうでもよくなったような。 絶望した悪魔ーーそんな感じ。 危険な目だ。 「レラが勝手に僕のなかから、ぬけだして、ルナを抹殺し始めたからさ。 僕らの魂は、もとは一つ。レラにできることは、僕にもできる。 だから、自分自身をクサリにつないで、身動きとれないようにした。カギはヒモを使って、ポケットに入れた。 そうしといて、この死んだ体に僕が入れば、レラは行き場を失って、いやおうなく本来の体に戻される。レラは僕に捕まえられるってわけ」 「じゃあ、あそこに倒れてるのは……」 ユウヤは手錠と器具をつけられたまま倒れている少女をふりかえった。 無情にシオンが言いはなつ。 「レラだよ。さっきの説明で一つだけ、はぶいたけどね。ほんとは、気分で姿が変わるわけじゃないんだ。 そのとき表層意識に出てるほうの姿に、見ためも変化する。 僕とレラは、いつも、すれちがい。 僕が出てるときは、レラは僕の深層意識のなかで眠ってる。レラが出てるときは、僕が。 それがイヤだったんだ。わかるだろ? やっと魂の半身と一つになれたのに、いつも会うことができないなんて。 いつも二人でいられるようになりたかった。もっと完全に二人が融合すれば、そうなれるんじゃないかと思った。そのための新しい器がほしかった」 シオンの瞳から涙がこぼれる。 それは、血の涙だ。 死体の流す涙。 でも、美しい。 やっぱり、この人は危険だ。 悪魔のくせに、万人を魅了する。 「わたしと一つになればいいじゃない。ねえ、シオン。わたしのなかに来てよ!」 ナツキがシオンに、すがりつく。 カタン、カタンと音が聞こえた。 一瞬、ナツキの魂の形が見えた。 それは、おぞましい形だった。半身の腐った結合性双生児ーー?
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