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でも、見えたのは一瞬だ。 次の瞬間には消えていた。 シオンの持つ斧が、無慈悲にナツキの頭に、ふりおろされたから……。 「いやだね。僕の白雪姫はレラだ。レオンの魂を持つ、レラだけ」 ユウヤは床に倒れたレラの手錠をはずした。口をふさぐ器具も。 レラの脈は、すでに絶えていた。 「レラ……」 こんなに、ひっそりと死を迎えるなんて、レラらしい。儚く、せつない。 「レラ……」 「どけよ」 抱きあげようとするユウヤを、シオンが押しのけた。 そのとたん、シオンの手が、くずれた。 手首からさきが、肉ごと骨から剥離して、床に落ちる。 「もう、この体も、もたないや」 シオンは笑った。ほのかに、さみしげに。 「レラ。いっしょに逝こう」 レラを抱きながら、シオンは溶けていった。
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